芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年2月7日火曜日

対話型鑑賞の新しい可能性の模索

こんにちは。今日の筑波は、朝から小雨が降ったり止んだりを繰り返しています。先程、芸術鑑賞論B(通年)の授業が終わったばかりです。
 この授業は、三学期、美術館・ギャラリーなどで鑑賞方法として主流となっている対話型鑑賞の新たな可能性について模索している所です。受講生の方々により“鑑賞を深める”ということはどういうことなのかを考えて頂き、それを実演するための鑑賞の実践もしてもらいます。
 今日は、芸術支援学(*筑波大学芸術系にあり、芸術支援の在り方について模索する。あるいは、その歴史を調査することで学問としての体系を整えるコース)の院生さんのお二人が“鑑賞を深める”ためのオリジナルの対話型鑑賞法を提案し、実演されました。お一人、二十分程度の実演の時間があり、その後、他の受講生の方達により感想・改善案が出され、デイスカッションがされました。

○先ず、お一人の方から。
■“鑑賞の深まり”についてどう考えるか
 「鑑賞する作品の数を増やすことによって、作品への理解が深まるのではないか」
■ 作品:松本美枝子(まつもと・みえこ/写真家)写真集『生きる』から写真を四枚。
■ 手順・四枚の写真を一枚ごとに、約2分半ずつかけてプロジェクターにより投影し、進行役が鑑賞者の発言を引き出していく。事前・事中・事後に作品に関する積極的な情報投入はなく、何が見えますかという問いを繰り返しながら、一人一人の鑑賞者に問いかけてゆく。四枚の写真を見終わった直後、これら四枚の写真に共通するものは何ですか、という問いが投げかけられた。鑑賞者側からは、白い色を多く使っていた、きちんと撮影しないで自然体で写していたなどの意見が出された。
■ 提案者の意図 四枚の作品の共通点を理解することで、作者がテーマとした『生きる』ということの意味を作品から読み取ってもらいたい。
■鑑賞者側の感想
 ●最後に四枚の写真を総括して、鑑賞を深めるなら、最後に四枚が同時に提示されることで鑑賞者が作品全体を見渡せる方が良いという案が出た。
● 事前・事中に、何らかの説明や情報投入がないまま、四枚の写真を連続して見ることになるため、鑑賞者達は、“この鑑賞の意図は何なのか?”という疑問が起こり、進行役の意図を探るような心理がはたらく傾向にあった。


○次の方です。
■“鑑賞の深まり”についてどう考えるか
 「鑑賞する作品の時間を増やすことによって、作品への理解が深まるのではいか」
■ 作品 曽谷朝絵(そや・あきえ/画家)『バスタブ』
■ 作品『バスタブ』をプロジェクターにより投影。進行役が積極的に仕切るものではなく、鑑賞者同士が自由に対話を進める。そのため、対話型鑑賞ではなく、会話型鑑賞と命名されている。この中で、進行役は仕切るのではなく、鑑賞者の一人として仲間に加わる。だが、当然、初見の鑑賞者達と比べて、作品の背景は熟知しており、画集も持参しているため、ある程度、会話の流れの中で、“調整”“整理”する役割は、果たすことになる。
■ 提案者の意図 対話型鑑賞には進行役による策意的な介入が感じられることから、鑑賞者同士の自由な会話を方法として選んだ。
■ 鑑賞者側の感想
●自由に話しを進める会話型鑑賞なら、プロジェクターを用いた投影よりも、机の上に画集などの冊子を広げた方が、指差しやすく気軽に会話ができるという提案がでた。

 今日は、実演後、非常に有意義な意見交換がでました。