芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年2月29日水曜日

修士論文構想発表会・修士論文発表会

こんにちは。今日、2月29日(水)14:00〜16:00は、教育研究科芸術科教育コースの修士論文構想発表会・修士論文発表会が開かれました。普段、授業ではご指導頂けない先生方に来て頂き、貴重な御意見を伺いました。デイスカッションも非常に白熱したものとなり、あっという間に終了予定の16:00を過ぎ、とても充実した発表会となりました。

◆修士論文構想発表(プレゼンテーション15分 指導助言15分 資料(A4判)を準備
●「開発途上国における美術教育開発はどうあるべきかーモルデイブ共和国での実践を事例としたモデル構築のための一考察ー」(仮題)
●「現代アートの要素を含んだ共同製作による効果と仮題ー知的障害児を対象とするコミュニケーションを重視した美術科授業の実践ー」(仮題)

◆修士論文発表会(プレゼンテーション20分 指導助言10分 資料(A4判)を準備
●「現代アートを題材とした小学校と美術館の連携プログラム

●学会口頭発表事前検討(プレゼンテーション20分 指導助言10分 資料(A4判)を準備)
「他教科教員志望学生が美術教育に抱く問題意識の質的考察」



*ご案内/芸術鑑賞論Bの授業を受講されている芸術支援コースの方がスタッフなど運営に参加しているアート・プロジェクトをご紹介します。興味をお持ちの方は、ネットでの検索をお願いします。

◆大森アートフェスタ/2012年3月16日(金)〜3月20日(火祝) 東京都の大森町を中心に開催される様々なワークショップ・展覧会など。(大森アート・ビレッジ プロジェクトの一貫です)
特に、受講生の方が関わったプロジェクトが、「大森アートまちあるき」(大森のギャラリー・アトリエとアートスポットを巡るおすすめコースを設定し、アートなまちあるきを行います)です。「大森アートマップ」を作成し、大森に在住するアーテイスト、ギャラリー。博物館、芸術的な産業技術、アートスポットを紹介する地図を作成し配布します。*「大森アートまちあるき」3月17日(土)13:00〜17:00 大森駅中央改札口13:00集合 参加費無料「大森アートマップ」進呈 事前申込要 お申し込みお問い合わせ「大森アート・ビレッジ プロジェクト事務局」TEL/FAX:03-5935-7881(平日13〜17時) E-mail:art@oomori-cafe.com

◆全児童自動館/2012年3月17日(土)10:00〜17:00 会場/練馬区立中村児童館(東京都練馬区中村2-25-3 2階)
中高生とアーテイストがつくるアートイベントです。一日限りの文化祭です。参加者達が撮影に参加することで、自主映画を完成させるアートプロジェクトです。ウエブサイト http://zenjido.jidokan.net/

◆キワマリ荘(SpaceAFA)「占部史人展『浮寝の旅』」2012年3月3日(土)〜4月8日(日) 12:00-18:00(*土日のみオープン) 入場無料 茨城県水戸市北見町5-16*この展覧会は同時期、水戸芸術館現代美術ギャラリーでも同時開催されています。SpaceAFAブログ http://spaceafa.exblog.jp/

2012年2月28日火曜日

芸術鑑賞論Bの授業を終えて(4)

こんにちは。先週から、芸術鑑賞論(B)の受講生の方々の三学期のまとめのレポートを公開させて頂いております。
三学期は、美術鑑賞の行為中、鑑賞者にとって鑑賞が“深まった”と判断できるものは何なのか。また、それはどのような鑑賞実践を行い、どう調査すればよいのか。こうした問題点を踏まえ、受講生のみなさん各自に実践して頂きました。

 今日は、鑑賞の“深まり”が、“情動を引き起こすこと”と考えておられる受講生の方の実践発表と考察です。情動は、鑑賞者の個人的な好き嫌いの感情が起こる、または、揺れ動くことを指すと思われます。以下、基本的に発表者の方のレジュメを基にして公開しますが、*マークは私(和田)が補足説明を加えた箇所です。

■鑑賞実践の目的
意図的に情動を引き起こすことで、より深い美術鑑賞の実践を目指す。

■実践の方法
*先ず、諸外国の風景がポストカードサイズになった写真の複製を数枚、鑑賞者達の前に差し出す。
1.鑑賞者が自分の好きなカードを選択する。・・・「好き/嫌い」という“情動”の発動

2.選んだ理由を説明する。・・・「○○が△△(だから好き)」という“記述・分析・解釈”
*記述(写真の中にあるものを客観的に指摘すること)・分析(写真の中にあらわれたもの同士の位置関係や形・線・色彩などの造形要素について分析すること)・解釈(作品の意味について自分の考えを述べること)

3.情報カードを受け取る。*風景に関する情報(情報を用いるかどうかは鑑賞者が選択できる)

4.選んだカード(今回は風景写真)の宣伝文句を考える。・・・作品の価値を定める“判断”
*判断(写真の価値について自分の判断を下すこと)

■実践結果
1.選択カード「アユタヤ(タイ)」選択理由「もう一回東南アジア旅行したいな」宣伝文句「ここに400年の歴史アユタヤ王国が」
2.選択カード「ヴャラナシ(インド)選択理由「ごちゃごちゃしてる。色がたくさんある。鉛筆みたいな建物」宣伝文句「インドのヒーリングスポット:反省しよう、この場所で」
3.選択カード「オックスホード(イギリス)」選択理由「色がきれいだから。イギリスに行きたいから」宣伝文句「大学とは思えない素敵な街並み(建築)」
4.選択カード「バイブリー(イギリス)」選択理由「色あいが好き。手前の花がかわいい」宣伝文句「レンガづくりの小さな屋根のおうち〜ウイリアム・モリスも愛したカントリーサイド〜

■結果の考察
・4人中3人が、選択理由に客観的な造形要素ではなく、個人的な嗜好や経験を結びつけて挙げていたことが特徴的であった。従来の理論から言えば、美術鑑賞において個人的な嗜好は極力省くことが望ましいのかもしれない。だが、活動の手立てを工夫することによって、鑑賞者の嗜好・感情・経験のみによるのではなく、しかしそれらを無にもしない鑑賞が可能になるということがわかった。アカデミック(*学術的)な理論と、プラクテイカル(*実践的)な手段を統合することが重要なのだと思う。
・宣伝文句を考える活動は、かなり情報に左右される。最初に受けた印象をもっと活かすために、情報の量を調節する、段階的に情報を小出しにするなどの工夫が必要かもしれない。
・今後は、情報の発動の有無が鑑賞の深まりにおいて具体的にどう影響するのか、そして今回の実践方法が他のジャンルの作品でも有効であるかを検証してゆきたい。

2012年2月23日木曜日

一年間の芸術鑑賞論(B)を終えて(3)

こんにちは。
芸術鑑賞論(B)の授業参加者のみなさんの三学期のまとめを公開しています。今日は3回目です。
今日の発表者の方は養護学校に勤務しておられる方です。知的障害を持つお子さんの美術教育の在り方について研究をされています。
この方の芸術鑑賞論(B)の授業内の鑑賞実践も、障害のある方の絵を基にして行われました。この実践内容については、このブログの2012年1月31日火曜日「今日の芸術鑑賞論(B)」に掲載しておりますのでご参考にご覧下さい。

 以下、この発表者の方のレジュメから一部省略、補足を加えて公開します。

鑑賞のミニ実践は、スライドを使ってファシリテーター(進行役)である私(発表者)と鑑賞者四名(受講者)によって対話式鑑賞法で行った。ホワイトボードに簡単に、実践のための指標を記し、発言内容を進行役が記入していく方式をとった。そのため、鑑賞者が鑑賞行為に対して身構える形となってしまったこと、一人一人に答えさせるよう義務付けした形となってしまったことは反省点である。この鑑賞スタイルはワークシート(紙媒体による記述方式)形式に近い。そのため、ワークシート(紙媒体)に掲載された作品図版上に吹き出しなどを描き、直に鑑賞者へ渡して意見を書いてもらい、それを基に鑑賞者同士がテーブルの上で意見交換をとれるような形にした方が、積極的な対話を促しやすいように思う。また、記述式をとらない場合は、身体的な動作を実演してもらうパフォーマンスを取り入れた鑑賞法が考えられる。
また、今回のもう一つの反省点は情報投入の点である。今回提示した情報は作者の障害のことにしか触れておらず、他の作品や作者にまつわるエピソードに触れることはなかった。情報投入は鑑賞において、進行役が意図して組み込める最大の武器であり、鑑賞者が新たな視点で作品を鑑賞するきっかけづくりになる。しかしながら、この情報投入の使い方を間違えると、作品の見方が偏ったものとなるので要注意である。今回の場合、情報が少なすぎてしまい、筆者が障害を持っていたという観点で鑑賞が終わってしまったように思う。作者がどうやってこの絵を描いているのか、作品と比較しながら再度観察を繰り返すことが望ましいであろう。

2012年2月22日水曜日

一年間の芸術鑑賞論(B)を終えて(2)

こんにちは。芸術鑑賞論Bが1年間を通し、修了しました。
 三学期の授業の振り返りについて、受講生の方達の発表を公開させて頂いております。
 今日は、鑑賞が深まる要因には、作品を鑑賞した「時間」に関係がある、と考えられていた方の実践結果の反省です。以下、主要な内容を発表者の方のレジュメから抜粋しご紹介したいと思います。

■鑑賞作品 曽谷朝絵 【Bathtub(2007年、油彩キャンバス)】

■実践形態
・ ファシリテーター(*進行役)は、グループに入り一鑑賞者として作品を鑑賞する。・ファシリテーターによる鑑賞の誘導(特定の主題や目的に到達されるための発言等)は行わず、会話形式で作品について自由に発言を行う・誘導のない、会話による鑑賞によっても、鑑賞の深まりが果たされることを検証する。

■結果と反省
●造形要素の鑑賞や解釈・判断・分析などについて
・ 作品の色あいや描き方等、造形要素についての発言が会話の全体を通して多くみられる。→作品の特徴となる部分であるため、多くの発言が出たと推察される。しかし、そこからなぜ作者がそのような表現をしたのか、受ける印象にはどのようなものがあるのかなど、解釈や判断行為に発言をつなげていく必要があった。
・ 会話後半部でも、再び観察や連想に関する話題が登場する。→時間が経過するごとに、一つの事柄(作品要素)に関する発言は増えていく。そこからさらに連想行為を広げていく傾向がある。
・ 解釈、判断行為に及ぶ発言は出てこなかった。→発言が作品の造形要素に関する連想・分析から発せられることが多かった。そこから作品の主題や表現性に関する解釈や判断に至るためには、ファシリテーターによる誘導(情報投入)が必要。
・ 作品の要素について、発言の多くが連想行為からなされたものだった。→ゴールや筋道が決まっていない鑑賞では、鑑賞者自身のこれ迄の経験や記憶からその作品との関連性を探そうとする(その傾向がより顕著に表れる)。
・ 鑑賞時間の中盤(7分ごろ)から徐々に分析行為に関する発言が増えるようになる。→連想行為の蓄積から、なぜそれが描かれたのか、そのような描かれ方をしているのかについて考察が行われる。

●ファシリテート(*司会進行)について
・ 作品に注目させ、関心を持たせ、考察と発言を促すための手だてが必要→単なる会話にならないように・・・
・ パラフレーズ(*進行役が鑑賞者の意見を言い換えること)を行わずに会話を自然に続けていく方法を考える必要。→会話の中で必要な情報を適宜注入できるように、ファシリテーターは作品に関する知識と経験(記憶)が豊富なことが臨まれる。
・会話をスムーズにつなぐための雰囲気作りとして、作品をスクリーンに投影するのではなく、複製画(コピー)などを配布し作品を囲んで会話ができるようにすべきだった。

2012年2月21日火曜日

1年間の芸術鑑賞論Bを終えて(1)。

こんにちは。今日は、ついに芸術鑑賞論Bが1年間を通し、終わりました。1年間、対話型鑑賞(1学期)、美術批評教育と比較鑑賞(2学期)、鑑賞の深まりに関する実践とリサーチ(3学期)と、様々な鑑賞教育について検討し、新しい在り方について模索してきました。また、様々な鑑賞教育を学習したからといって、内容が散逸したわけでもなく、どのタイミングで美術作品の情報を投入するのか、どうすれば鑑賞者の考え方・概念が変化するのか、また、それはどういう意味なのか、という主要課題があって展開されていったので、まとまりのあるものとなりました。
 今日から、6回に分け、三学期の授業を終えた受講生の方6人の振り返りの内容の一部を公開して行きたいと思います。
 ちなみに、この授業で主題となった、鑑賞行為中の概念変化とは、鑑賞者の概念・見方・考え方が鑑賞行為の途中で変化することです。三学期の授業ではいかにして、この概念の変化を引き起こすことができるのか、その概念とは何なのか、という問題点が横たわっていました。また、その概念の変化を起こすためには、いつ、どのようなタイミングで、どんな作品情報を投入し、どのようなやり方で投入すれば良いのか、という問題も一方ではありました。

 今日は、作品を多く見せることが鑑賞の深まりに繋がると考えた方のものを紹介したいと思います。

 【反省点/改善点】始めの想定では、ある作家の作品を多く見せることで、情報投入を行わなくても、概念変化をおこし鑑賞を深めることができるのではないかと考え、導入部分や途中での情報投入を行わなかった。
 そのため、今回の鑑賞では鑑賞者側はあまり作品について深く考えることが出来なかったように思えた。また連続して作品を観せるということが、上手くいかずそれぞれ単体での鑑賞になってしまっていた様な感じを進行役を務めながら感じた。そのため連続して作品を何枚も鑑賞することの有効性はあまりなかったように感じてしまった。
 しかし、実践の結果を見ると、2、3作品目と多様な意見が出たことが解り、また4作品では急に主題について深まっていく様子が見てとれる。「馬の鼻筋の白」をきっかけとして、3作品目の雪景色の写真の白いイメージとリンクして、1、2作品目も引き合いに出し、白という言葉をキーワードにして鑑賞を進めていた部分は、作品を数多く見せ、鑑賞を深めることに成功した部分といっていいと感じる。
 今回のような鑑賞を、より深めていくためには、作品のタイトルやキーワード等の情報の投入を行った方が鑑賞はより深まったのではないかと考える。また前回の講義でも指摘されたように、順々に作品を鑑賞していくだけではなく、作品全部を観ている状態で鑑賞したり、鑑賞者に次に鑑賞したい作品を選ばせるなどして、作品を鑑賞者へどのように観せるかという工夫が必要であると感じた。
 今回は、単純に作品を鑑賞する数を増やすことにより鑑賞を深めようという試みであったが、単純に鑑賞する作品の数を増やすことだけでは、主題の判断や概念変化を起こすような大きな深まりを生むことは難しい。情報の投入や、鑑賞作品の見せ方を工夫することによって深まりは増すのではないかと考える。

2012年2月16日木曜日

こんにちは。
 昨日、水曜日午後6時から8時半まで教育研究科(大学院修士課程)の中で、退官される先生や修了される学生さんのためのお別れ会がありました。芸術科教育コースからは、お一人の方が修了されました。現代アートの学校教育における意義を研究されてきた方です。理論面だけでなく美術館での実践面を視野に入れ、初等教育を対象にした研究を続けてこられました。修士論文も、非常に充実した内容となりました。一見、多くの方が取りかかっているような研究テーマに見えて、実は、あまり扱われたことがないテーマです。貴重なテーマを持った方ですので、修了後の今後のご活躍が楽しみです。

 さて、火曜日の芸術科教育研究Bでは、受講生のみなさんが修士論文のための構想発表をし、他の受講生の方の意見を取り入れながら、各自の研究内容の深化を進めてきました。今週は、お二人の院生の方の発表がありましたが、今日はそのうちのお一人の発表をご紹介したいと思います。来週にも、芸術科教育コースでは、修士論文の構想や論文構成に関する中間発表会がありますので、レジュメの内容もかなり具体的なものとなってきたようです。以下にその一部を掲載します。

(仮題)「開発途上国における美術教育開発はどうあるべきか
—モルデイブ共和国での実践を事例としたモデル構築のための考察—」

研究の背景と目的
(1)目的
 1.開発途上国における美術教育開発の実態を明らかにし、その背景要因について考察する。
 2.自身のアクションリサーチとしての実践を、内発的発展論の視点から分析し、美術教育開発モデルを構築する。
(2)背景
途上国の教育開発において、識字教育や理数科教育などと比較すると、美術教育の分野はこれまで積極的な議論がなされないできた。確かに、今まさに貧困に喘いでいる国にとって、美術教育は優先すべき事項ではないのかもしれない。しかしそれは、美術教育は俗福な国しか享受することが出来ないという、皮肉な現実を暗示するものである。
 本研究では、美術教育も開発途上国の子どもたちの健やかな成長に必要不可欠なものであると捉え、かつ途上国という特色を考慮した上で、その発展を目指すにはどのような視点が必要であるのかを考えたい。

*ここからは私(和田)の文です。
 この方は実際にNGOの活動の一貫として、モルデイブの現地で、図画工作教育を教えてきた経験があります。その実体験を生かしながら、開発途上国における美術教育の在り方について、この研究を通し、模索されていくそうです。非常に、希少価値のある研究テーマですので、今後の展開が楽しみです。

2012年2月14日火曜日

こんにちは。今週、教育研究科は、2月15日(水)夕方6時から「退職・転出教員及び修了生歓送会」があります。今年も、もう修了の時期に入りました。二年間はとても早いです。

 さて今日は、先ほど、芸術鑑賞論Bの授業が終わったばかりです。三学期は、“鑑賞の深まり”とは何かを受講生のみなさんが考え、実際に鑑賞の実践を行って頂き、その結果を自らリサーチしてもらっています。

 今日は、お一人の方に発表をして頂きました。以下、一年間の授業の展開上、初めてこの内容を見る方には分からない点が多いと思いますので、私(*和田)が説明を記し、ご紹介したいと思います。

●“鑑賞の深まり”をどう考えるか。
○鑑賞者の方の考え方の変化(概念変化)をより引き起こしていくことが“鑑賞を深める”とする。考え方の変化(概念変化)とは、美術作品の中に描かれた物への言及に留まらず、個人的な経験に照らし合わせた作品の解釈を加えつつ、人類全体に共通する普遍的なテーマの解釈に向かっていくことを指すと思われます。
●では、“鑑賞を深める”ためにはどのようにすればいいのか。
○ 鑑賞者が鑑賞を深めてゆくためには、個人的な経験から語る言葉に加え、作品の背景となる情報を知っていくことが必要です。「情報が自分の考えを裏付ける要素となり、より“分析”“解釈”“判断”の要素が増える」(*発表者のレジュメより)よって、対話中に司会進行役が、作品の情報をいつ与えるのかという時間の問題に大きく関係してきます。事中に与えられる作品の情報とは、主に、作品のタイトル、作者名、作者による作品の説明、など美術館のキャプション(*作品紹介のための情報)レベルに留めるもののようです。よって、事前には作品情報が全くないまま、作品のみを前にして、鑑賞がスタートすることになります。

*以下、実践内容について発表者の方のレジュメを基にして、補足を加えます。
□実践(時間20〜25分)
● 作品名:「Exactitudes」(Ari Versluis and Ellie Uyttenbroek)
*公開される作品は展覧会冊子の図版、及びカラー印刷された作品の写真。
● 鑑賞人数:複数(二人以上)
*鑑賞者の方々は、作品の図版を中心にテーブルを囲み、椅子に座る。
● 鑑賞形態:鑑賞者同士による会話形式(基本ファシリテーター〈*進行役を指す〉は不在です)
*提案者による、ある程度の介入あり。例えば、この作品を見てどう思いますか?などである。積極的な介入はしない。
● 鑑賞方法:1.鑑賞者に鑑賞題材となる作品を渡し、その作品について自由に会話をしてもらう。2.鑑賞の中盤で、作品に関する「情報」をファシリテーターが投入します。(計3回)*情報投入のタイミングは、時間によるものとする。
*対話中に提供される情報は、提案者の声かけにより、手で持ったA4サイズの紙に印字された文字を公開することで与えられる。これが対話中、三度繰り返される。この際、情報に関する説明が加えられる。

□ 投入“情報”の順序・内容(どの要素の情報を投入するのか)
1.「この作品は『Exactitudes』で、和訳は“正確さ・精密度”である。」(〈主題〉?の情報投入)
2.「ここで分類されている人々は作者の『“〜ぽく”見える人』という視点(=主観)で分けられているものである。」(〈表現生〉の情報投入)
3.「この作品が展示されていた企画展名は「これも自分と認めざるを得ない」展である。」(〈主題〉の情報投入)

*実際の本人の感想
 ●対話中に作品の情報を投入すると、鑑賞者の自由な対話を閉ざすのではないかという心配があった。●実際に情報を投入するタイミングが、当初、予定をたてていた、時間の経過ではなく、対話の流れを配慮し、投入せざるをえなくなった。また、情報公開しようとした内容が、先に鑑賞者により語られることもあり、予想した展開を大きく変えるような場面があった。

2012年2月9日木曜日

こんにちは。今日のつくばは晴れです。少し温かい日差しが刺すようになりました。筑波大学の教育研究科芸術科教育コースの授業では、23年度、新しい試みとして、対話型鑑賞の更なる可能性や、美術教育への質的研究の可能性などを検討してきました。

■昨日の授業について
 昨日の芸術科教育実践演習では、3月末の新潟大学で開催される美術科教育学会の研究発表の準備のため、パワーポイント作りが始まりました。研究の題目は「他教科教員志望学生が美術教育に抱く問題意識の質的考察」です。美術教科以外の教員志望の学生さん達が、美術教科に対して、どういう問題意識を持っているのかを調査し、分析した研究です。芸術科教育コースの三人の院生の方々の共同発表となります。院生さん達にとって、初めての学会発表となりますので、先生の助言・示唆を受けながら、準備を進めています。
 一年間、この授業では、美術教育への質的研究の実用化と可能性について検討を続けてきました。質的研究の意味を簡潔に述べますと、数や量などの数値の統計を分析する量的研究では、分析しきれないものを対象とする研究分野、といえます。非常に曖昧な言い方で申し訳ないのですが、実際、質的研究の専門分野の方でも、一言で質的研究の意味を述べることは困難とされているようです。

 ■パワーポイント作り
 現在、学会が作成する概要集へ集録するための研究概要が出来上がっており、この内容を基に、パワーポイントの研究目的や背景・研究方法・研究結果などを共同で作成することになりました。実際の口頭発表は二十分間発表、五分間質疑応答となります。実際にパワーポイントを作ってみると、様々な課題点が見つかりました。1)調査結果を分析したモデル図の字が、今一、離れた所からは見にくい点。(レジュメにして、配布することになりました)2)文章をパワーポイントへ移行した際、口頭発表されるため、ある程度、文章を口頭化しておかないと違和感がある点。3)質疑される内容を、ある程度、想定してパワーポイントを作成する必要がある点。4)全ての調査結果と分析内容を公開することは時間制限上、不可能なため、代表となる例を選び、公開しなければならない点。などです。
 二月中には、一度、学内において事前の発表練習がありますので、今、集中して準備を進めています。

2012年2月8日水曜日

こんにちは。今日のつくばは曇りです。雨が降りそうで、降らないといったところでしょうか。気温は少し高めで、寒くはないです。

お知らせです。
筑波大学ではつくば市の子供達の能力を調査してきましたが、その結果の報告会が3月3日(土)本大学にて開催されます。この報告会の中で、芸術科教育コースの石崎和宏先生がつくば市の小学校の子供達の図画工作に関係する能力を調査した結果を「芸術的感性の発達」として発表されます。参加費無料・事前申し込み不要ですので、お気軽にご参加下さい。以下、日時です。

筑波大学プレ戦略イニシアテイブ
「未来の子ども育ち研究支援センターの創設」シンポジウム・調査報告会

日時■2012年3月3日(土)13:00〜17:20
場所■筑波大学体育芸術学群棟5階 5C506教室
12:00〜受付
13:00〜13:10 開会の辞ならびに本プロジェクトの概要
13:10〜15:10 シンポジウム
15:30〜17:20 平成23年度調査報告会
17:20 閉会の辞


■ 昨日の芸術教育研究B
 さて、今日は芸術教育研究Bという、修士論文の研究指導を中心にした授業の内容について触れたいと思います。昨日は芸術支援のコース所属の院生(修士課程1学年)の方が修士論文の構想・仮の章立てを発表されました。
 以下、レジュメがありますのでそれを基に研究目的を掲載したいと思います。

■仮題「美術科教師の継続的な学びについての考察—高等学校教師の取り組みを中心にー」

■研究の目的 美術科教育研究における教師を中心とした考察の重要性、教師の学びと内省の必要性を述べること。
・ 美術科教師のあり様、授業開発と教材研究に取り組む意識、姿勢、実践を(教師の自発的、継続的な学びと内省)という視点から明らかにする。
・ 「継続的な学びと成長を遂げる美術科教師像」の提案とその重要性、仮題の提示を行う

*ここからは私(和田)のまとめです
 発表者の方は、佐藤学さん『教師というアポリア』(1997年)、鹿毛雅治さん「教師もやる気を支えるもの」『成長する教師』(1998年)集録を持参され、この両著書を基に、教師自らが、教師であるとはどういうことなのか、その存在を常に問い直すことで、教師が反省的な姿勢を持ち、そこから成長を続ける教師のあるべき姿を模索されています。この教師像が、今回、高等学校の美術教師に求められているわけです。
 この研究は、論理的に展開してゆくだけでなく、実際に何人かの高校の美術教師の方にインタビューをし、授業開発の方法とその反省方法などを分析し、具体的な教師像のモデルの在り方について模索されるそうです。そのリサーチ結果の分析をふまえて、最終的に美術科教師の「学び」とは何か、「反省」とは何かを検討・定義されるそうです。
 非常に熱心に発表されていたので、今後の展開が楽しみです。

2012年2月7日火曜日

対話型鑑賞の新しい可能性の模索

こんにちは。今日の筑波は、朝から小雨が降ったり止んだりを繰り返しています。先程、芸術鑑賞論B(通年)の授業が終わったばかりです。
 この授業は、三学期、美術館・ギャラリーなどで鑑賞方法として主流となっている対話型鑑賞の新たな可能性について模索している所です。受講生の方々により“鑑賞を深める”ということはどういうことなのかを考えて頂き、それを実演するための鑑賞の実践もしてもらいます。
 今日は、芸術支援学(*筑波大学芸術系にあり、芸術支援の在り方について模索する。あるいは、その歴史を調査することで学問としての体系を整えるコース)の院生さんのお二人が“鑑賞を深める”ためのオリジナルの対話型鑑賞法を提案し、実演されました。お一人、二十分程度の実演の時間があり、その後、他の受講生の方達により感想・改善案が出され、デイスカッションがされました。

○先ず、お一人の方から。
■“鑑賞の深まり”についてどう考えるか
 「鑑賞する作品の数を増やすことによって、作品への理解が深まるのではないか」
■ 作品:松本美枝子(まつもと・みえこ/写真家)写真集『生きる』から写真を四枚。
■ 手順・四枚の写真を一枚ごとに、約2分半ずつかけてプロジェクターにより投影し、進行役が鑑賞者の発言を引き出していく。事前・事中・事後に作品に関する積極的な情報投入はなく、何が見えますかという問いを繰り返しながら、一人一人の鑑賞者に問いかけてゆく。四枚の写真を見終わった直後、これら四枚の写真に共通するものは何ですか、という問いが投げかけられた。鑑賞者側からは、白い色を多く使っていた、きちんと撮影しないで自然体で写していたなどの意見が出された。
■ 提案者の意図 四枚の作品の共通点を理解することで、作者がテーマとした『生きる』ということの意味を作品から読み取ってもらいたい。
■鑑賞者側の感想
 ●最後に四枚の写真を総括して、鑑賞を深めるなら、最後に四枚が同時に提示されることで鑑賞者が作品全体を見渡せる方が良いという案が出た。
● 事前・事中に、何らかの説明や情報投入がないまま、四枚の写真を連続して見ることになるため、鑑賞者達は、“この鑑賞の意図は何なのか?”という疑問が起こり、進行役の意図を探るような心理がはたらく傾向にあった。


○次の方です。
■“鑑賞の深まり”についてどう考えるか
 「鑑賞する作品の時間を増やすことによって、作品への理解が深まるのではいか」
■ 作品 曽谷朝絵(そや・あきえ/画家)『バスタブ』
■ 作品『バスタブ』をプロジェクターにより投影。進行役が積極的に仕切るものではなく、鑑賞者同士が自由に対話を進める。そのため、対話型鑑賞ではなく、会話型鑑賞と命名されている。この中で、進行役は仕切るのではなく、鑑賞者の一人として仲間に加わる。だが、当然、初見の鑑賞者達と比べて、作品の背景は熟知しており、画集も持参しているため、ある程度、会話の流れの中で、“調整”“整理”する役割は、果たすことになる。
■ 提案者の意図 対話型鑑賞には進行役による策意的な介入が感じられることから、鑑賞者同士の自由な会話を方法として選んだ。
■ 鑑賞者側の感想
●自由に話しを進める会話型鑑賞なら、プロジェクターを用いた投影よりも、机の上に画集などの冊子を広げた方が、指差しやすく気軽に会話ができるという提案がでた。

 今日は、実演後、非常に有意義な意見交換がでました。

2012年2月6日月曜日

3月の学会発表へ向けての試み

こんにちは。今日の筑波は、朝から雨です。
 学生時代(*和田)、筑波大学の敷地内の寮で過ごしましたが、雨が降ると外出が大変で苦労した思い出があります。なぜかといいますと、つくばは研究施設が多いため、学園都市の敷地のほとんどが広大な研究機関の所有地になっています。そのため、目的地へ向かうおうとすると立ち入り禁止区域が多いため、遠回りせざるをえず、移動距離が非常に長くなります。車を持ってないと不便で、自転車だと雨が降ると外出が億劫になってしまいます。ですが、初夏や秋になると、この長い道なりに埋められたポプラ並木の緑の葉の色や紅葉がとてもきれいで壮観なので、いい所もあり難点もありといった所です。

 今日は、3月末の美術科教育学会の発表へ向け、準備を進めている芸術科教育コースの院生(修士課程)の三人の方の合同研究の内容について触れたと思います。まだ、正式に3月の美術教育学会の発表の詳細がホームページなどに公示されておりませんので、詳しい言及は避けたいと思います。ここでは、学会発表の予告編のようなものとみて頂ければ幸いです。

 この学会発表までのいきさつは、水曜日(通年)の芸術科教育実践演習にあります。この授業では西條剛央さん『ライブ講義 質的研究とは何か』を基にして新しい美術教育の研究方法を模索してきました。二学期・三学期は、いよいよこの研究方法を用いた実践となります。
 
 水曜日の授業では、二学期、受講生のみなさんと共に、美術教育の今後の課題・問題点は何か?ということを討論していたのですが、話し合って行くうちに、様々な問題点がでました。そこで、それらの問題点を一つ一つ統一・整理してゆくことで、最終的に一つの問題点を導き出しました。それは、美術教育以外の他の学校教育コースの方々は、美術教育のことをどのように考えているのだろうか?というものです。この問題点は、今まで、あまり触れられたことがありませんでした。
 さて、この問題点を解決するための指標として、西條さん『ライブ講義 質的研究とは何か』から、研究方法を参考にすることにしました。この著書『質的研究とは何か』では、作者の西條さんが実際に院生さんの授業で行った研究調査の実習内容が講義形式で記されております。教育実習を終えた学生さんの方のレポートを基にして、教育実習生の方々がどのような葛藤や問題点をかかえているのかを調査する研究の経過が記されております。そして、受講生のみなさんが、実際に教育実習生の方々にインタビューし、その内容を分析し、そこから導き出された結果を基に図を制作し、問題点を浮き彫りにしょうと試行錯誤しています。
 芸術科教育コースの授業では、一学期、この西條さんの著書の研究方法を検討してきました。三学期に入り、この西條さんの著書の調査方法を基に、美術教育の専門外の教育関係者の方がどのように美術教育のことを考えているのか調査することになりました。三人の受講生の方々が、それぞれ、他の教育研究科のコースの院生さん達の所にインタビューへ行き、美術教育のイメージ・印象・思い出などをインタビューしました。次に、そのインタビューした録音内容を文章で書き起こし、どういう考え方が現われているのか各自分析しました。更に、その考え方を図でまとめてあらわし、今後の美術教育における問題点が示唆できるないのではないか、検証しました。
 特に大変だった所は、三人のインタビュー結果から導き出されたものが、当然、異なりますので、それを統合することだったように思えます。もうすぐ、正式に3月の美術教育学会の発表内容がホームページなどで公示されると思いますので、その際、この調査経過の詳細も公開したいと思います。

2012年2月3日金曜日

外国人教員特別留学生さんの集中講義ー日本文化の「和菓子」と「寄せ書き」

こんにちは。昨日は、諸事情から更新できませんでした。もうしわけないです。美術教育の授業内容の説明は長く続きそうですので、来週月曜から始めたいと思います。

先程、教育研究科に短期留学された外国人教員特別留学生さん達の集中講義を終えました。今日は、この講義について触れたいと思います。外国人教員特別留学とは、諸外国から来られた学校・教育関係の仕事に就かれた方々が、筑波大学大学院教育研究科に短期に留学される制度です。入学後は、各専門コースに別れ、日本の教育制度や様子など専門的な講義を受けて学びつつ、各自の研究論文を完成します。また、共通して日本語を学習する講義や、日本文化の理解を深める授業もあります。今日の集中講義は、その一貫とみてよいと思います。

 私(和田)は、毎年、この留学生さんの集中講義は何をしようか悩むのですが、私の職業柄、美術に関係するものを選ぶようにしています。昨年は、日本の“掛け軸”について授業をすることにしました。私の祖父が水墨画家でしたので、その絵を実際に持っていき、子どもの時の思い出を含め、詳しい背景を話しつつ授業を行いました。英語の紹介映像を見ながら、掛け軸の保存の仕方、巻き方、季節や行事に応じて出し入れするなど、西洋の絵画とは全く異なる性質について、みんなで学びました。

 今年は、日本の美に関係するものとして、“和菓子”と、卒業シーズンには欠かせない“寄せ書き”をテーマにして授業を行いました。
 全員で八人(一人欠席)参加しました。韓国・中国・インドネシア・タイ・ガボン・メキシコと様々な国から来られ、学校の先生だけではなく、政府の教育機関に所属されている方もおります。今回は、3.11以降、日本の観光客の減少や、留学生さんも激減していることへ配慮し、みなさんが母国へ戻った後、少しでも日本文化の良さを伝えて頂けるような授業をすることにしました。

○日本の“和菓子”の色と形について。
 日本の和菓子は、味だけではなくその見た目の美しさ、特に形(form)と色(color)も重要になってきます。特に、四季を象徴した形や色が求められてきます。例えば、春→桜→花弁を広げた形・ピンクの色彩などです。英語の紹介映像を見て頂いた後、実際の和菓子を基に、四季の変化がどう形と色に現われているのか説明させて頂きました。その後、食して頂きました。お菓子というと、カラフルでボリュームがあるなど娯楽的な要素が多いものですが、それに比べると和菓子は厳格でやや質素な感じがするせいか、反応に困られているようでした。味が少し甘すぎるかな、と心配していたのですが、味に関してはみなさん、おいしく頂けているようでした。


○日本の“寄せ書き”の習慣について。
 日本人が当たり前に思っていて、外国人が全く知らないものとして、別れ際に色紙にメッセージを書く“寄せ書き”があります。特に、学校では、先生や卒業時の友達との別れの際、書くことが多いです。一人一人の違いを出すように、カラフルな色ペンを用いることも独特の習慣です。日本の学校教育の文化を知ってもらうことと、丁度、留学生のみなさんが来月卒業しそれぞれの母国に戻られることになりますので、外国人留学生のみなさんに互いに書いてもらうことにしました。私が中学校の美術教師だった時、生徒達から頂いたものを見てもらい、寄せ書きの説明をしました。みなさん、寄せ書きは今まで知らなかったようですが、うまく互いの色紙を交換し完成することができました。休んでいる方の色紙も今日みんなでメッセージを描き完成させました。描いた後、色紙を持ち、みんなで写真を撮る、などいい思い出になりました。

 この授業を通じて、新しい発見があったのですが、日本人はあまり深く接してない人であっても、形式的にお別れのメッセージを書く習慣があるということです。これが前提にならないと、“全ての人にもれなくメッセージを書いてもらう”という、“寄せ書き”の習慣は成り立たないものなんだな、と気づきました。別れを惜しむだけでしたら、仲の良い人同士で交換すればよいだけでしょうから。。。。

 来週から再び、今週の水曜日の続きから始めたいと思いますので、よろしくお願いします。

2012年2月1日水曜日

授業・芸術科教育実践演習(水曜)について

こんにちは。

 今日は先程、■芸術科教育実践演習(通年 水曜日三限)の授業が終わったばかりです。

 この授業では、現在、受講生のみなさんが共同で、3月末に新潟大学で開催される美術科教育学会への発表へ向け、その準備が進められています。研究テーマは、美術教科以外の他教科の教員へ志願されている学生さん達が、自分の個人経験から美術教科についてどのような印象を持っているのかを調査し、その結果を分析し、今後の美術教育の在り方についての新しい考察の視点を提供することにあります。

 芸術科教育コースに在籍中の三人の院生の方が、筑波大学の教育研究科の院生の方々へインタビューし、その結果をみんなで分析することで、一つのモデル図を作り、美術教育関係者へ向けて、何らかの問題解決への指針を提供するものです。現在、学会発表へ向けて、最終的なまとめと共に概要集に掲載するための概要を作成しています。

 この研究の基となったものは、早稲田大学で教員を務める、西條剛央さんの『ライブ講義 質的研究とは何か』(新曜社)です。この著書の内容を基に、美術教育の研究方法としての新しい視点とは何か一学期から考察を続けてきました。そして、二学期からいよいよ、“質的研究”を活用した研究が実践されてきたわけです。

 明日は、この西條さんの著書の質的研究について触れたいと思います。