芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年2月14日火曜日

こんにちは。今週、教育研究科は、2月15日(水)夕方6時から「退職・転出教員及び修了生歓送会」があります。今年も、もう修了の時期に入りました。二年間はとても早いです。

 さて今日は、先ほど、芸術鑑賞論Bの授業が終わったばかりです。三学期は、“鑑賞の深まり”とは何かを受講生のみなさんが考え、実際に鑑賞の実践を行って頂き、その結果を自らリサーチしてもらっています。

 今日は、お一人の方に発表をして頂きました。以下、一年間の授業の展開上、初めてこの内容を見る方には分からない点が多いと思いますので、私(*和田)が説明を記し、ご紹介したいと思います。

●“鑑賞の深まり”をどう考えるか。
○鑑賞者の方の考え方の変化(概念変化)をより引き起こしていくことが“鑑賞を深める”とする。考え方の変化(概念変化)とは、美術作品の中に描かれた物への言及に留まらず、個人的な経験に照らし合わせた作品の解釈を加えつつ、人類全体に共通する普遍的なテーマの解釈に向かっていくことを指すと思われます。
●では、“鑑賞を深める”ためにはどのようにすればいいのか。
○ 鑑賞者が鑑賞を深めてゆくためには、個人的な経験から語る言葉に加え、作品の背景となる情報を知っていくことが必要です。「情報が自分の考えを裏付ける要素となり、より“分析”“解釈”“判断”の要素が増える」(*発表者のレジュメより)よって、対話中に司会進行役が、作品の情報をいつ与えるのかという時間の問題に大きく関係してきます。事中に与えられる作品の情報とは、主に、作品のタイトル、作者名、作者による作品の説明、など美術館のキャプション(*作品紹介のための情報)レベルに留めるもののようです。よって、事前には作品情報が全くないまま、作品のみを前にして、鑑賞がスタートすることになります。

*以下、実践内容について発表者の方のレジュメを基にして、補足を加えます。
□実践(時間20〜25分)
● 作品名:「Exactitudes」(Ari Versluis and Ellie Uyttenbroek)
*公開される作品は展覧会冊子の図版、及びカラー印刷された作品の写真。
● 鑑賞人数:複数(二人以上)
*鑑賞者の方々は、作品の図版を中心にテーブルを囲み、椅子に座る。
● 鑑賞形態:鑑賞者同士による会話形式(基本ファシリテーター〈*進行役を指す〉は不在です)
*提案者による、ある程度の介入あり。例えば、この作品を見てどう思いますか?などである。積極的な介入はしない。
● 鑑賞方法:1.鑑賞者に鑑賞題材となる作品を渡し、その作品について自由に会話をしてもらう。2.鑑賞の中盤で、作品に関する「情報」をファシリテーターが投入します。(計3回)*情報投入のタイミングは、時間によるものとする。
*対話中に提供される情報は、提案者の声かけにより、手で持ったA4サイズの紙に印字された文字を公開することで与えられる。これが対話中、三度繰り返される。この際、情報に関する説明が加えられる。

□ 投入“情報”の順序・内容(どの要素の情報を投入するのか)
1.「この作品は『Exactitudes』で、和訳は“正確さ・精密度”である。」(〈主題〉?の情報投入)
2.「ここで分類されている人々は作者の『“〜ぽく”見える人』という視点(=主観)で分けられているものである。」(〈表現生〉の情報投入)
3.「この作品が展示されていた企画展名は「これも自分と認めざるを得ない」展である。」(〈主題〉の情報投入)

*実際の本人の感想
 ●対話中に作品の情報を投入すると、鑑賞者の自由な対話を閉ざすのではないかという心配があった。●実際に情報を投入するタイミングが、当初、予定をたてていた、時間の経過ではなく、対話の流れを配慮し、投入せざるをえなくなった。また、情報公開しようとした内容が、先に鑑賞者により語られることもあり、予想した展開を大きく変えるような場面があった。