芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年2月22日水曜日

一年間の芸術鑑賞論(B)を終えて(2)

こんにちは。芸術鑑賞論Bが1年間を通し、修了しました。
 三学期の授業の振り返りについて、受講生の方達の発表を公開させて頂いております。
 今日は、鑑賞が深まる要因には、作品を鑑賞した「時間」に関係がある、と考えられていた方の実践結果の反省です。以下、主要な内容を発表者の方のレジュメから抜粋しご紹介したいと思います。

■鑑賞作品 曽谷朝絵 【Bathtub(2007年、油彩キャンバス)】

■実践形態
・ ファシリテーター(*進行役)は、グループに入り一鑑賞者として作品を鑑賞する。・ファシリテーターによる鑑賞の誘導(特定の主題や目的に到達されるための発言等)は行わず、会話形式で作品について自由に発言を行う・誘導のない、会話による鑑賞によっても、鑑賞の深まりが果たされることを検証する。

■結果と反省
●造形要素の鑑賞や解釈・判断・分析などについて
・ 作品の色あいや描き方等、造形要素についての発言が会話の全体を通して多くみられる。→作品の特徴となる部分であるため、多くの発言が出たと推察される。しかし、そこからなぜ作者がそのような表現をしたのか、受ける印象にはどのようなものがあるのかなど、解釈や判断行為に発言をつなげていく必要があった。
・ 会話後半部でも、再び観察や連想に関する話題が登場する。→時間が経過するごとに、一つの事柄(作品要素)に関する発言は増えていく。そこからさらに連想行為を広げていく傾向がある。
・ 解釈、判断行為に及ぶ発言は出てこなかった。→発言が作品の造形要素に関する連想・分析から発せられることが多かった。そこから作品の主題や表現性に関する解釈や判断に至るためには、ファシリテーターによる誘導(情報投入)が必要。
・ 作品の要素について、発言の多くが連想行為からなされたものだった。→ゴールや筋道が決まっていない鑑賞では、鑑賞者自身のこれ迄の経験や記憶からその作品との関連性を探そうとする(その傾向がより顕著に表れる)。
・ 鑑賞時間の中盤(7分ごろ)から徐々に分析行為に関する発言が増えるようになる。→連想行為の蓄積から、なぜそれが描かれたのか、そのような描かれ方をしているのかについて考察が行われる。

●ファシリテート(*司会進行)について
・ 作品に注目させ、関心を持たせ、考察と発言を促すための手だてが必要→単なる会話にならないように・・・
・ パラフレーズ(*進行役が鑑賞者の意見を言い換えること)を行わずに会話を自然に続けていく方法を考える必要。→会話の中で必要な情報を適宜注入できるように、ファシリテーターは作品に関する知識と経験(記憶)が豊富なことが臨まれる。
・会話をスムーズにつなぐための雰囲気作りとして、作品をスクリーンに投影するのではなく、複製画(コピー)などを配布し作品を囲んで会話ができるようにすべきだった。