芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年11月30日金曜日

2学期の「芸術鑑賞論A」(火曜3限)の授業が終わりました。

 11月13日(火)、2学期の「芸術鑑賞論A」の授業が終わりました。今学期は、アメリカのフェルドマン(Edmund Feldman)という方が提案した美術批評の方法を用いて、受講生の方々が各自、オリジナルのワークショップを提案し、授業内で行ってきました。その結果を踏まえ、反省点を各自の鑑賞方法に生かす、というものを行いました。8人の受講生の方に、毎回お2人ずつワークショップを実演して頂き、他の受講生の方々が参加者となり、毎回、終わった後に意見やアドバイスを交換しあいました。全て、とてもユニークなワークショップが行われ、各受講生の方々の個性があらわれたものとなりました。  前回、この授業で行われてきた鑑賞のワークショップについてご紹介しましたが、他のお二人の実演についても簡単に述べさせて頂きたいと思います。  ●アーテイストの藤浩志さんの提案した「かえっこ」という芸術活動をワークショップの題材として導入された方がおられました。藤さんは使わなくなったおもちゃを組み合わせ造形作品を創っておられる方です。それだけでなく、「かえっこ」と呼ばれ、使わなくなった、おもちゃを市民の方が持ってきて、別のものと交換するシステムを提案しています。ワークショップの中では、この「かえっこ」を、実物のおもちゃではなく、おもちゃの写真を使って体験することになりました。参加者の方達は2人一組になって、「かえっこ」を体験しました。  ●日本の仏像の鑑賞ワークショップも行われました。仏像は、その造形形式の特徴により、位(くらい)が分かるようです。どのような造形の特徴を見て、位が判断できるのか、ワークショップが行われました。参加者の方達は2人1組になり、自分たちで話しあって、配布された仏像の写真を位によって並べる活動を行いました。その後、仏像の位についての説明を受けました。

2012年11月22日木曜日

芸術科教育特講(水曜3限目)の2学期の授業が終わりました。

芸術科教育特講(水曜3限目)の2学期の授業が終わりました。前回のこの授業の内容を更新して以降、4回の授業が行われました。受講生である院生の方が選んだ論文を基に、デイスカッションが行われました。以下、その4つの論文の簡単な要約と院生の方から出された意見について記します。ネットでも全文が閲覧できますので、興味のある方は論文名を基にアクセスしてみてください。 ●坂倉杏介「『とまどい』の解消とクラスの成長—ワークショップ型」の授業に関する一考察:2008年度『芸術の現在』を事例にー」『慶應義塾大学日吉紀要. 人文科学』第25号,2010年p,325- 362.大学の授業で実際に行った継続的なワークショップの実践報告と考察です。ワークショップを行う際、参加者が対話の中で生じる「とまどい」を解消するよう提案されています。この参加者の「とまどい」とは、他の参加者とのコミュニケーションをする際の暗黙のルールを知らないため、対話の展開が予測できないため起こるものであると説明されています。 ●池内慈朗「レッジョエミリアとハーバード・プロジェクト・ゼロによるコラボレーション Making Learning Visible—幼児教育から学ぶドキュメンテーションによる学習過程の可視化—」『美術科教育学会』第31号,2010年,p.43-54.レッジョエミリアとハーバード大学で行われたプロジェクトには、中心人物の間に学術的交流があり、互いに影響関係があったとされ考察されております。院生の方の今後の自分の研究に向けた課題点としては、“なぜ、今の日本にレッジョエミリアのアプローチが必要とされているのか。”“日本の幼児教育には何が必要なのか。「地域にとけ込む学校」として、今後、どのような課題があるのか。”などがあげられております。 ●奥村高明「状況的実践としての鑑賞-美術館における子どもの鑑賞活動の分析」『美術教育学』第21号,2005年,pp.151-163頁. 美術館における子ども達の鑑賞の状況を観察することで、鑑賞学習への理論的枠組みを再検討していくものです。この論文の中では、子ども達が絵画作品を鑑賞して移動する際、立ち止まってくる、動きへの「よどみ」や、美術館側が鑑賞を手助けするために独自に設置している「しかけ」について影響が考察されております。 ●岡山万里・高橋敏之「大原美術館における『お話作り』による幼児のための絵画鑑賞プログラム」『美術教育学』第31号,2010年,151-161頁。大原美術館が1993年から行っている幼児対象の絵画鑑賞プログラム「お話作り」についての14年間の実施記録を基にした考察を行っています。院生の方の今後の自分の研究に向けた課題点としては、幼児にとっての「深い鑑賞」とは?何なのか。レッジョ・エミリアの視点でこれをやってみるとどうなるのか?などがあげられておりました。

2012年11月12日月曜日

芸術科教育研究A/ 10月16日(火),10月30日(火)、11月6日(火) 

芸術科教育研究Aの授業が, 10月16日(火),10月30日(火)、11月6日(火)の3日間あり4人の院生の方に研究内容を発表して頂きました。以下にレジュメから目的などを抜粋したいと思います。 ●「ファッション分野の展覧会における美術館教育」 研究目的/近年、美術館ではファッション分野の展覧会が増えている傾向にある。ファッションだけでなく複数の領域にまたがる展示など、様々な展覧会の形が存在する。以下、ファッション分野の展覧会をファッション展と表記する。  ファッション展で行われている教育普及活動は、美術展覧会と同様に講演会やワークショップなどである。しかし,美術館でのファッション教育という研究はあまりされてこなかった。また、ファッションデザイナーやファッション関係者を講師に招いて教育普及活動事例が多くあるため、どのような傾向があるのか事例をもとに検証していく。 ●「アートを通した幼児教育の可能性」 目的/日本の幼児教育における「子どもの表現」の発展をはかる。アートという視点を通して、社会的にあまりその奥深さが認識されていない「幼児教育」の価値を示す。論点/1.レッジョ保育がイタリアからアメリカに移入された時、実践者の間で一番違和感をもたらした問題となった点は何か?日本の場合はどうなのか?2.日本の現行の幼稚園教育要領・保育指針との協合性、あるいは不協合性はあるのか?3.結局、日本の我がレッジョ保育から学べることは何なのか?4.優れた幼児教育と言われているが、イタリアでの中学高校レベルではどうであろうかという疑問→成長した彼らはどのようになっているのか? ●「アートプロジェクトにおけるステークホルダー間のコーデイネート機能について」(*ステークホルダーとは、ここでは、プロジェクトにおいて異なる職務を持つ者同士を繋げる役割を果たす人物を指します)研究目的/アートプロジェクト運営組織の持続可能性を高める役割としてのアートNPOの視点から、アートプロジェクトにおけるステークホルダー間のコーデイネート機能について考察する。研究方法/1.先行研究、各種文献、資料からの考察。2.インタビューに基づく分析。 ●「第三章 モルデイブにおける美術教育実践:活動記録の質的分析」(*執筆中の修士論文の一部)本章の目的/モルデイブでの実践の様子を書き留めた「活動記録」を分析することにより、当時の状況を明らかにすること」/分析の視点 活動記録の視点には、筆者の主観が相当に含まれており、それらを実践における「客観的な事実」として分析するのはほぼ不可能であった。そこで、「記述には筆者の主観が含まれている」=「実践における状況や事象に対する筆者の解釈である」という前提のもとに分析を行うことで、分析そのものの信憑性を保とうと考えた。

2012年11月6日火曜日

芸術鑑賞論A(10月16日・10月30日・11月6日)の授業

10月16日・10月30日・11月6日の三回の授業の中で6人の院生の方により、鑑賞ワークショップが提案•実演されました。ワークショップの参加者の方々も院生の方々です。以下、その6人の方のワークショップを概観したいと思います。  ●先ず、絵に描かれた顔をテーマにして、鑑賞のワークショップが行われました。導入部で、福山雅治の顔の写真を例として提示し、顔を知らない人に言葉だけでその人の特徴を伝えることが困難であることが説明されます。次に、画家アンソールの顔が多く描かれた絵画作品の複製を提示し、参加者同士で自分がどの顔を選んだのか、言葉だけで相手に伝言しながら当てるというゲームを行います。次に漫画家のあだち充さんのキャラクターの顔が数多く掲載された図版を提示し、再び、どの顔を選んだのか言葉だけで相手に伝えるゲームを行いました。 ●国吉康雄の絵画作品を用いて、鑑賞のワークショップが行われました。参加者の方々は、先ず、国吉[鯨に驚く姉妹]という作品を基に、画家の経歴について説明を受けます。次に、参加者のお一人お一人が、国吉の7枚の絵画作品の複製図版(紙媒体・縮小したもの)を受け取り、一枚一枚の作品を見て、簡単な記述をし、分析したうえで、それを制作年代順に並べる活動をします。そして、なぜ、そういう順番に並べたのか、参加者らにその理由も聞いていきます。  ●澤田知子さん[OMIAI]という作品を使って鑑賞のワークショップが行われました。この作品は、お見合い形式で撮影された女性の写真が作品になっているものです。ワークショップでは、先ず,そのお見合い写真の複製を五枚、ワークショップ参加者に提示して、男性参加者の場合、結婚する相手を誰にするかを選び、女性の参加者の場合、息子さんがいたら、その結婚相手を誰にするのか選びます。その五枚の写真をボード貼り、ファシリテーター(院生の方)が、誰をどんな理由で選んだのかを聞いていきます。次に、澤田知子さんの別の写真作品(証明写真が数多く連なったもの)を見ることで、この作品の制作がいつ・どこで・何を・何によってなされたのかを考察し、各参加者らが一言ずつキャプションに記し、それをボードに貼り出し、対話型鑑賞を行いました。  ●物に変形するようデザインされた服をモチーフにし、鑑賞のワークショップが行われました。まず、布状でできた、色彩豊かなソフトクリーム・ホットケーキ・軍艦巻きなどの写真図版がみんなの前に差し出されました。図版にあらわれたモチーフは解体すると服になり身にまとうことが可能です。これを知ってもらい、みんなに物が変形する服について知ってもらいます。次に、より複雑な形をした変形する服を四種類提示し、人が身にまとったものと、物状になっているものの2パターンから、どの物がどの服なのかを当ててもらうゲームを行います。これらは、四人一組になって話し合いながら、どの服が変形したものなのかを推察していき、理由も考えていきます。 ●「作品を表わす二字熟語を考えよう」山下清さんの油絵や貼り絵などを見て、連想して、あてはまる二字熟語を選び、その理由を述べるというものです。あらかじめ準備されていた二字熟語の中から該当すると思われるものを各自参加者の方々が選び、その理由を述べていきます。次に、「作品から来年の抱負を考えよう」となり、山下清の花火をテーマとした貼り絵が年賀状にプリントされたものを見て、来年の抱負を二字熟語で記し、その理由も記します、参考として山下清の日記に記された内容も参考にすることができます。 ●ガボンのお墓を参考にして、アフリカ芸術の理解を深めるというワークショップを行いました。アフリカで用いられている民具がホワイトボードに張り出されますので、それを鑑賞し、各自参加者の方が意見を述べていきます。その後、実際にオリジナルの仮面を、ペンで描き、各自、自由にデザインします。最終的には、ガボンのお墓の写真を見て、これが芸術作品なのか、だとしたら価値があるのかどうか、をデザイン性などから、五段階のチエックリストを用いて評価します。