芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年2月21日火曜日

1年間の芸術鑑賞論Bを終えて(1)。

こんにちは。今日は、ついに芸術鑑賞論Bが1年間を通し、終わりました。1年間、対話型鑑賞(1学期)、美術批評教育と比較鑑賞(2学期)、鑑賞の深まりに関する実践とリサーチ(3学期)と、様々な鑑賞教育について検討し、新しい在り方について模索してきました。また、様々な鑑賞教育を学習したからといって、内容が散逸したわけでもなく、どのタイミングで美術作品の情報を投入するのか、どうすれば鑑賞者の考え方・概念が変化するのか、また、それはどういう意味なのか、という主要課題があって展開されていったので、まとまりのあるものとなりました。
 今日から、6回に分け、三学期の授業を終えた受講生の方6人の振り返りの内容の一部を公開して行きたいと思います。
 ちなみに、この授業で主題となった、鑑賞行為中の概念変化とは、鑑賞者の概念・見方・考え方が鑑賞行為の途中で変化することです。三学期の授業ではいかにして、この概念の変化を引き起こすことができるのか、その概念とは何なのか、という問題点が横たわっていました。また、その概念の変化を起こすためには、いつ、どのようなタイミングで、どんな作品情報を投入し、どのようなやり方で投入すれば良いのか、という問題も一方ではありました。

 今日は、作品を多く見せることが鑑賞の深まりに繋がると考えた方のものを紹介したいと思います。

 【反省点/改善点】始めの想定では、ある作家の作品を多く見せることで、情報投入を行わなくても、概念変化をおこし鑑賞を深めることができるのではないかと考え、導入部分や途中での情報投入を行わなかった。
 そのため、今回の鑑賞では鑑賞者側はあまり作品について深く考えることが出来なかったように思えた。また連続して作品を観せるということが、上手くいかずそれぞれ単体での鑑賞になってしまっていた様な感じを進行役を務めながら感じた。そのため連続して作品を何枚も鑑賞することの有効性はあまりなかったように感じてしまった。
 しかし、実践の結果を見ると、2、3作品目と多様な意見が出たことが解り、また4作品では急に主題について深まっていく様子が見てとれる。「馬の鼻筋の白」をきっかけとして、3作品目の雪景色の写真の白いイメージとリンクして、1、2作品目も引き合いに出し、白という言葉をキーワードにして鑑賞を進めていた部分は、作品を数多く見せ、鑑賞を深めることに成功した部分といっていいと感じる。
 今回のような鑑賞を、より深めていくためには、作品のタイトルやキーワード等の情報の投入を行った方が鑑賞はより深まったのではないかと考える。また前回の講義でも指摘されたように、順々に作品を鑑賞していくだけではなく、作品全部を観ている状態で鑑賞したり、鑑賞者に次に鑑賞したい作品を選ばせるなどして、作品を鑑賞者へどのように観せるかという工夫が必要であると感じた。
 今回は、単純に作品を鑑賞する数を増やすことにより鑑賞を深めようという試みであったが、単純に鑑賞する作品の数を増やすことだけでは、主題の判断や概念変化を起こすような大きな深まりを生むことは難しい。情報の投入や、鑑賞作品の見せ方を工夫することによって深まりは増すのではないかと考える。