芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年2月23日木曜日

一年間の芸術鑑賞論(B)を終えて(3)

こんにちは。
芸術鑑賞論(B)の授業参加者のみなさんの三学期のまとめを公開しています。今日は3回目です。
今日の発表者の方は養護学校に勤務しておられる方です。知的障害を持つお子さんの美術教育の在り方について研究をされています。
この方の芸術鑑賞論(B)の授業内の鑑賞実践も、障害のある方の絵を基にして行われました。この実践内容については、このブログの2012年1月31日火曜日「今日の芸術鑑賞論(B)」に掲載しておりますのでご参考にご覧下さい。

 以下、この発表者の方のレジュメから一部省略、補足を加えて公開します。

鑑賞のミニ実践は、スライドを使ってファシリテーター(進行役)である私(発表者)と鑑賞者四名(受講者)によって対話式鑑賞法で行った。ホワイトボードに簡単に、実践のための指標を記し、発言内容を進行役が記入していく方式をとった。そのため、鑑賞者が鑑賞行為に対して身構える形となってしまったこと、一人一人に答えさせるよう義務付けした形となってしまったことは反省点である。この鑑賞スタイルはワークシート(紙媒体による記述方式)形式に近い。そのため、ワークシート(紙媒体)に掲載された作品図版上に吹き出しなどを描き、直に鑑賞者へ渡して意見を書いてもらい、それを基に鑑賞者同士がテーブルの上で意見交換をとれるような形にした方が、積極的な対話を促しやすいように思う。また、記述式をとらない場合は、身体的な動作を実演してもらうパフォーマンスを取り入れた鑑賞法が考えられる。
また、今回のもう一つの反省点は情報投入の点である。今回提示した情報は作者の障害のことにしか触れておらず、他の作品や作者にまつわるエピソードに触れることはなかった。情報投入は鑑賞において、進行役が意図して組み込める最大の武器であり、鑑賞者が新たな視点で作品を鑑賞するきっかけづくりになる。しかしながら、この情報投入の使い方を間違えると、作品の見方が偏ったものとなるので要注意である。今回の場合、情報が少なすぎてしまい、筆者が障害を持っていたという観点で鑑賞が終わってしまったように思う。作者がどうやってこの絵を描いているのか、作品と比較しながら再度観察を繰り返すことが望ましいであろう。