芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年5月15日火曜日

芸術鑑賞論A(4回目)/家族による対話型鑑賞

先程、芸術鑑賞論A(4回目)の授業が終わりました。  今日は、前回の続きです。院生の方々が行ってきた課題の発表です。院生の方々がご自宅の家族を対象に、美術作品の複製画を対象にして、ざっくばらんに話す対話型鑑賞、あるいは、司会役を決めて対話による鑑賞をしました。次に、音声レコーダーに記録した対話内容を分析することで、鑑賞活動全体の大きな流れや構造を分析しました。  具体的な方法は、対話記録の中から、キーワードとなる言葉をピックアップし、一言一言を一枚一枚の付箋紙に書き込み、次に、付箋紙をグルーピング(分類)して、更に各グループ名を命名します。付箋紙を模造紙の上に貼りながら各グループごとにまとめて構成し、対話型鑑賞の流れと全体構造が解り易いよう、イラスト・説明などを記して整理します。  今日は三人の方に、その出来上がった模造紙を前にして説明して頂きました。 ■院生の方(A) ● 対象作品/小川芋銭『水魅載』●対話メンバー/夫・妻・息子(大学生)の三人 ● 対話形式/自由な対話●対話内容について/対話記録から抽出された言葉は、作品の中に何が描かれているのか、という問いへの答えが多かったように思えます。その対話記録を分類し、「中心」「絵の中で見つけて」「分析」「解釈」「流れるものは」「他には」、と命名されています。 ■院生の方(B) ● 対象作品/戸来貴規『日記』●対話メンバー/祖父・母・姉・妹(二十代)の四人●対話形式/自由な対話●対話内容について/現代美術の彫刻作品が対象のためか、作者がなぜこのような作品を作ったのかという制作意図を考えることが対話型鑑賞の目的となったようです。事件を解決する探偵の推理の行動が、対話型鑑賞の各行動に喩えられました。対話記録を分析した時のテーマは、縦軸と横軸を使った表により分類され、横軸が「証拠」「状況」「印象」「手段」「推理」「作者像」、縦軸が「立体的な視点」「平面的な視点」の二つです。この縦軸と横軸が交錯するマス目の中に、該当すると思われる言葉が記された付箋紙を貼っています。 ■院生の方(C) ● 対象作品/ミレー『オフィーリア』●対話メンバー/母・娘●対話形式/娘が母に問う一対一の形式で進められる●対話内容について/母が作品を最初に見た時点から、『オフィーリア』についての考えが発表されるなど、かなり作品テーマを掘り下げた展開となったようです。対話記録を分類し、命名したものは、「明暗から」「川の様子」「花の種子」「水面に浮かぶ花」「生をあきらめた姿」「どうして女性は水面に浮かんでいるか」「死」「生」です。 みなさん、ご家族で対話型鑑賞をされており、良い家族交流にもなったようです。  今日は、この他、授業の後半部に、石崎和宏先生から、美的発達段階についての説明がありました。この美的発達段階は、アメリカの美術鑑賞の研究者パーソンズさんが提唱したものです。この内容につきましては、次の機会にご報告したいと思います。(文責・和田学)