芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年5月10日木曜日

芸術科教育特講(4回目)の授業がありました。

水曜日には芸術科教育特講(第4回目)の授業がありました。この授業では、美術科教育研究への質的研究の方法論を導入するうえでの検討、あるいは、質的研究を院生さん自身の修士学位取得のための自己の研究のための方法論として活用することが期待された授業です。一学期は、秋田喜代美・能智正博 監修『事例から学ぶ はじめての質的研究法(教育 学習編)』(東京図書)を基本文献として講読を進め、デイスカッションを進めてゆきます。  今回の授業では、秋田喜代美さんが担当した「第一章 教育・学習研究における質的研究」(3〜20頁)を基に、デイスカッションをしました。この文献の中では、教育現場を基に質的研究を進める方への基本的な説明、質的研究がどのようなものなのか、質的研究にはどのような種類の研究方法があるのか、それらについて解り易くまとめてあります。  今回、この第一章の部分の要約を担当された院生の方がA4サイズのレジュメ一枚にまとめ、自分なりの意見を述べてもらい、そこからデイスカッションを進めることになりました。担当された院生の方は、養護学校の授業の中で行う、現代アートの共同制作を通じたコミュニケーションの可能性を研究テーマとしています。コミュニケーションといっても、言語ではなく、それ以外の表情・身体の動きなどにより養護学校の生徒さん同士が意思疎通をする様子をリサーチされるそうです。今回の文献の中には「教室でやりとりを取り扱う7つのアプローチ」(17頁)が掲載されていますが、その院生の方は、自分の研究が、そのアプローチの中の一つ、「社会的認知、状況論、活動理論のアプローチ」に主に相応するのではないかと述べられました。このアプローチは「教室での実践は個人の学習に影響を与えるよう、どのようなやりとりを行っているのか、個人の学習は教室での実践の社会的関与をどのように促すのか」と説明されております。本文にも記されておりますが、実際は、一つのアプローチに限らず、様々なアプローチを複合的に扱う、もしくは、一つのアプローチの中にも様々な種類のアプローチが存在しており、それらを柔軟に考慮していくことが必要となってくると思われます。  また、文献の中で、美術教科教育の研究分野でも著名な人物、アイスナー(Eisner)さんの提唱した教育的鑑識眼を持つことが、教育現場での質的研究の調査や評価に必要だと述べてある部分にも注目されていました。この教育的鑑識眼とは、教育現場で起こった現象を美術批評家のように記述・解釈・評価することを指します。文献の冒頭の章の中で、はやくも美術教育分野で著名なアイスナーさんの言葉が触れられており、質的研究と美術教科教育の方法論の接点が垣間見えるもので、非常に興味深いものでした。(文責・和田学)