芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年1月31日火曜日

今日の芸術鑑賞論(B)

こんにちは。今日は先程、芸術鑑賞論B(通年)の授業が終わったばかりです。
 三学期の授業では“鑑賞の深まり”、つまり、鑑賞を深めてゆくことはどういうことなのか、受講生のみなさん、お一人お一人が考え、実際に鑑賞を深めるための鑑賞の実践を行ってもらっています。その際、進行役となり、他の受講生の方々を対象として、対話型の鑑賞活動を展開して頂きます。
 今日はお二人の方に発表して頂きました。

● 先ず、お一人目の方は“芸術を深める”ということを、嗅覚・触覚・味覚などの五感を通じて体験してゆく行為と定めています。芸術作品の味覚、などというと馴染みにくいかもしれませんが、実際、文部省の学習指導要領の中では、美術の授業において、“鑑賞”は、作品から“良さを味わう”という言い回しが使われています。この方は、特別支援の生徒さんを対象とした鑑賞教育の在り方を模索されている方なので、五感を使った感覚的な鑑賞方法は、論理的な道筋を立てた言語活動がしにくい生徒さんにとっても、有効な手段といえるでしょう。

実践
1)先ず、スライドに映し出された子供が描いたような風景画を見て、鑑賞者は思いついた擬音語を述べる。ガタガタ、キラキラ、ゴツゴツなど。
2)次に、先程、述べた擬音語が、絵の中のどの部分を見たのかを述べる。例えば、“フワフワ”は“飛行機を見て”など。
3)次に、なぜ、その絵の部分を見て、そういう擬音語で言ったのか、理由を述べる。
例えば、飛行機を見て、“フワフワ”と述べた理由は、“飛行機が浮いているような感じがした”からだと答えます。
4)ここで、司会者の方は、鑑賞の対象となった絵の作者を発表します(情報投入)。一見、子供が描いた風景画のように見えますが、実は、すでに他界された筋ジストロフイーの成人男性の方が描いた絵だということが実際の写真と共に紹介されます。
5)実際の作者を知ったうえで、この絵を見た全体の印象について述べてもらいます。
 今までの印象がくつがえされたことにより、新しい印象を述べることが期待された授業だと言えます。





● では、もう一人の方です。この方は、“鑑賞を深める”ということを、“情動”つまり、鑑賞者が好き嫌いなどの個人的な意思決定を強く引き起こした際に心が揺れ動くことと定義しました。

実践
1) 諸外国の観光名所の写真が掲載されたポストカードを数枚だし、“もらえますので、この中からカードを一枚選んで下さい。”と言います。
*受講生の皆さんはカードを一枚一枚選びました。
2)次に、その自分の選んだカードの写真の良い所を他の人に宣伝するような感じで、紙に短文で記してもらいます。その例として、新書が販売された際の表紙に巻かれた帯のキャッチコピーのようなものだと説明します。
3)次に、各自、自分が書いたキャッチコピーをみなさんに発表してゆきます。進行役の方は、なぜそう思ったのか、その都度、発表者に聞いていきます。

この三段階の実践には以下のような理論があります。
1) 作品の選択 好き/嫌いという情動の発動
2) 選択理由・作品の特徴の言語化 「○○が△△(だから好き)」という記述・分析・解釈
3) 宣伝文句 作品の価値を定める判断(解釈も含まれる?)
 
 来週は、また別の方が発表します。