芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年1月19日木曜日

芸術鑑賞論Bの授業について(一学期)

みなさん、こんにちは。できるだけ、こまめに更新してゆきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 今日(1月19日)は、芸術科教育コースの先生と院生さん達が、同大学内の丸善書店にて集り、芸術科教育コースの院生室に置く蔵書を選びました。特に、美術や教育に限られることなく、幅広い視点で蔵書が選ばれ、購入が決定しました。毎年、蔵書を増やしてゆくことで、充実した学習環境が整ってきています。

 さて、今日は火曜日三限に開講されている芸術鑑賞論Bについてお話ししたいと思います。

 芸術鑑賞論は、簡潔に説明しますと、その名前の通り、芸術の鑑賞に関して理論的な内容を検討する授業です。

 特に、平成23年度は、対話型鑑賞という方法論の検討から始まりました。対話型鑑賞は、美術作品に対して何人かの人々が対話をしながら鑑賞を進めてゆく、というものです。ですが、好き勝手に話しあうだけでは、意見もばらばらになり、鑑賞は深まりませんから、その中に一人、進行役(ファシリテーター)という人物を置くことで、鑑賞行為の方向をある程度、コントロールする役割を果たします。進行役は、意見をまとめる、誰かの意見を言い換える、など、様々な言葉かけの技術が必要です。さらに、経験を積むことで熟達してゆくことが必要でしょう。一学期は、この進行役の技術のトレーニングを、院生さん達が積むことで、ワークショップや授業など幅広い場で活用できることが求められているといえます。ですが、この授業では、院生さんの鑑賞方法に対する考え方が深まり、そうしたうえで自分達独自の鑑賞方法へ生かすことができる、ということが最も望ましいものですから、特に対話型鑑賞自体の技術習得そのものに重点を置くものではありません。そのため、対話型鑑賞の実践とは別に、この方法論の有効性に対するデイスカッションも盛んに行うことで、絶えず自分自身の鑑賞理論を批判的に捉える授業も何度も行いました。

 この美術鑑賞論の授業は通年ですが、一学期の授業の受講生の方々は、芸術科教育コースから四人、芸術支援専攻から四人、現職の教員の方が一人、計九人の方が集まりました。芸術支援コースは、芸術専門のコースに所属する専攻です。美術館経営や幅広い意味での芸術発展のための支援について考えるコースです。この授業の受講生の方々の所属を見ても分かりますが、学校教育の美術の授業に限らず、美術館やギャラリートークなど様々な場で鑑賞行為が行われることを視野に入れた授業です。こうした芸術専門分野と教育分野が融合した授業の開設は、他の国立大学法人の教育学部・教育研究科にはなく、芸術専門のコースを置いた筑波大学だからこそ、可能なものだと思います。
 
 一学期は、対話型鑑賞に関する文献を各自がまとめ、授業で発表した後、皆で意見をかわし合い、この方法論の有効性について検討することから始まりました。更に、院生の方々一人一人が作品を選定し、自らが進行役(ファシリテーター)となって受講生の方々を対象にして実践を行いました。そして、一学期(4月〜7月)の終わりには、各自、対話型鑑賞に対しての有効性について検討したレポートをまとめました。(*長くなりそうですので、今日はここで終えたいと思います。文責・和田学)