芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年1月23日月曜日

対話型鑑賞について(2)ー実践へ向けて

こんにちは。今日は前回(金曜日)の対話型鑑賞についての続きです。(文責・和田学)

 前回までのまとめ 芸術科教育コースでは、芸術鑑賞論B(通年)の一学期において、対話型鑑賞という芸術鑑賞の方法論について受講生の方々が学び、そして実践をしました。対話型鑑賞は、ただ単に美術作品を前にして鑑賞者が自由に語り合うというだけではなく、そこには司会者、進行役のようなファシリテーターと呼ばれる人物がおります。このファシリテーターは、主に鑑賞者達の活発な意見を促す他に、意見をまとめたり、鑑賞活動を活性化・調整する役割を果たします。そして、このファシリテーターの役割は 主に、受容(鑑賞者達の意見を受け入れる)・交流(鑑賞者同士の互いの対話を調整する)・統合(鑑賞者達の対話をまとめ、対話の流れの転換を計る)という、三つがあります。

では、この進行役(ファシリテーター)は、実際にどのような言葉かけをすることで、対話型鑑賞を進めてゆくのでしょうか。 

芸術鑑賞論Bの授業では、以下のレポートを基に、実践へ向け、好例を捉えることになりました。中学校の現場で働く先生が、生徒達を対象にして具体的な内容を記したもので、大変分かり易く記されております。学校現場の場合、進行役(ファシリテーター)は先生ということになります。

以下、青木考浩(宇都宮市立一条中学校)「対話型鑑賞法における『言葉のツール』考察レポート」をまとめてみました。


●対話型鑑賞のねらい
1.主として美術作品に親しんでもらうことをねらいにした授業
2.作者の制作意図や作品の主題に迫ることをねらいにした授業
3.自分なりの解釈を作ることをねらいにした授業
4.造形要素や技法の工夫を考えることをねらいにした授業
5.時代背景や作者の人物像に迫り作品の価値に迫ることをねらいにした授業

●対話型鑑賞における生徒の活動
1.作品を隅々までよく観ること
2.観て感じたことを言葉に出すこと
3.意見を共有すること
4.共有した意見から自分なりの新しい考えを創造すること

●教師が意識する言葉のツール
1.作品の隅々まで観させる言葉
2.言葉に出てきた言葉を、受容、確認する言葉
3.共有化を図るために、繰り返し、異なった意見の取り上げ、転換といった言葉
4.考えを創造するために、視点の変換、集約、振り返り、情報提供などの言葉

次に実践へ向けた言葉かけの例です。

●授業開始最初の「投げかけ」
 美術作品を見せて、生徒全員に意見を発表してもらう。

「この絵の中で、気になるところ、気づいたこと、発見したこと何でもいいから言ってごらん。(必要に応じて紙に書かせても良い)全員に、発表してもらいます。」*この最初の教師の言葉掛けにより、生徒がどのような視点を持っているのかを知り、その後のトークの流れを知ることができる、としています。

●全員発表中の「受容・確認」

「なるほど、いいところに気づいたね」「どこがそうなっている?」「他の人も気づいたかな?」「後で、みんなでそのことを考えてみましょう。」「それは先生も気づかなかった、すごいね。」「○○ということでいいかな?」「どうしてそう思った?」「そこまで考えてくれたんだ。」「なんで、『そんな物を・そんな風に・そんな色に・そんな形に』描いたんだろうね」

 明日は、授業の展開部の発話についてです。