芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年1月24日火曜日

対話型鑑賞(3)・三学期の今日の授業内容について

こんにちは。
 つくばは、昨夜から雪がふり始め、今朝から道路が凍結したため、交通渋滞が続いていたようです。午前中から日が照り始めたため、午後にはほとんど雪が解けてしまいました。それでも、日陰の雪はまだ残っていますが。。。さきほど美術鑑賞論B(三学期)の授業が終わったばかりです。 

 今日は、昨日の続きの芸術鑑賞論B(一学期)の中で行った対話型鑑賞と、今、終わったばかりの芸術鑑賞論B(三学期)の授業の振り返り、この両方を掲載します。興味ある方をご覧下さい。

●1月24日(水)芸術鑑賞論B(三学期)の振り返り
 一学期に対話型の鑑賞方法の検討と実践をしました。二学期には複数の作品同士を比較する比較型の鑑賞方法、更に美術作品の良い悪いという判断力を育成する美術批評教育という鑑賞方法についての検討・実践をしました。一学期は石崎和宏先生、二学期は和田学がそれぞれ主担当の教員となり授業を進めてきました。
 そして、三学期には、石崎先生が主となり、受講生の方自らが、“美術鑑賞を深める”、ということはどういうことなのかを考え、鑑賞者(受講生の方々)を対象にし、“鑑賞の深まり”を調査することになりました。当然、“鑑賞の深まり”は何なのか、各自受講生の方により異なりますので、調査を始める前に、この授業で各自が調査方法や評価の基準などを発表し、他の方の意見を取り入れることで、鑑賞の調査に対する考え方を再点検してもらうことになりました。
 今日の受講生の方のお二人の発表は、非常に斬新なものでした。一人の方は、美術を鑑賞する際、鑑賞者へ作品の情報を与えると、どれだけ鑑賞行為が深まるのか、を調査するようです。作品の情報とは作者の生い立ちなど、伝記の他に学者が調査した歴史的事実もあるわけです。それらの情報を、対話型鑑賞中の人に情報投入することで、その後、どれだけ“鑑賞が深まった”のか調べるというものです。
 もう一人の方は、そもそも、ある人が“鑑賞を終える”ということはどういうことなのかを問題にしています。そして、“鑑賞が深まる”ということは、“鑑賞が終わった”、“深まった”と鑑賞者自身が判断することだとしています。それを踏まえたうえで、 “鑑賞の深まり”とは、鑑賞者個人の体験をいかに作品と結びつけれるのか、ということへ設定し、それを調査するようです。
 来週からは、授業の中で、受講生の方々の鑑賞調査の実践が始まります。とても楽しみです。随時、公開していきたいと思います。

●芸術鑑賞論B(一学期)対話型鑑賞について
さて、昨日は、実際に対話を中心にした鑑賞方法をどのように展開してゆけばよいのか、その例を提示していました。今日は、その展開部です。
 青木孝浩先生(宇都宮市立一条中学校)の「対話型鑑賞法における『言葉のツール』考察レポート」を参考にさせて頂いております。
■鑑賞が始まった直後、進行役の方は、生徒へ作品の中で気づいたところから何でも指摘できるように促します(前回のブログを参考)。

■トーク中の発問*生徒が発した言葉に対し、根拠を言わせると良い。
 「どこからそう感じた?」「なぜ、そうだと思う?」「さっき、○○という違う意見を言った人もいましたね。どうでしょう。」「○○の意見が多かったから、そこからよく観てみましょうか。」「同じような考えを持った人、いるかな(挙手させる)」「たくさんの意見が出たから、ちょっと整理してみようか。(整理して伝える)」「今言った意見、もう一度言ってくれるかな。」「そのことについて、他のクラスで○○なんていう意見も出たよ。」「もっと隅の方まで良く見てごらん。」

■トーク終盤の発問(まとめに向けて*あまり一つの方向にばかり絞ってしまわないよう気をつける)
「いろいろ意見が出たけど、あらためて、どんな作品だと思う?」「どうして作者は、こんな風に描いた(作った)んだろうね?」「この絵に物語をつけるとしたら、どんな題名をつけてみる?」「どんな作者のメッセージが込められているんだろうね。想像してみよう。」「みなさんだったら、同じテーマでどんなものを作るかな(追体験への導き)」「この作品、みんなだったらどんな所に展示したいですか。

*閉ざされた質問:生徒の思考を止めてしまう注意すべき発問
1.無理にまとめようとしたとき
2.生徒の発言が待ちきれないとき
3.作品への思い入れが強すぎる場合

注意したい言葉かけの例(*かならずしも悪いというわけではないが、できるだけ控えたい言葉の例です) 
「○○は、どう?○○にも見えてこないですか?」「○○は、○○という感じに見えませんか?」「その考えは面白いですね。でも実は、○○ということです。」「実は○○ということなんだけれども、みんなはどう思う?」「この作品から、どんなことが分かるかな?」

 明日は、鑑賞者の意見が出ない時、進行役はどうするのか、意見が偏った場合、広がっていかない場合はどうするのか、について掲載します。
(文責・和田学)