芸術科教育コースによるブログです。授業内容や学校生活の様子などを更新していきます。

2012年4月25日水曜日

芸術科教育特講(3回目)の授業について

こんにちは。先程、芸術科教育特講の3回目の授業が終わりました。この授業は、秋田喜代美・能智正博監修『事例から学ぶ はじめての質的研究法』(2009年、東京図書)を読解しながら、美術教育領域の研究分野における質的研究の活用性について検討してゆく授業です。美術科教育専門の大学院授業において、美術科への質的研究の有効性を本格的に検討する先進的な授業だと思います。  授業の第1回目はオリエンテーション、第2回目は、現在の美術教育研究の状況について、美術科教育学会誌『美術教育学』の掲載論文のレビューを基にデイスカッションし、検討しました。第3回目の今日は、来週から本格的に始まる質的研究の授業に備え、従来、教育研究として、主流を閉めていた教育工学と、その後にあらわれた質的研究の特性の違いについて、文献をレビューしながらデイスカッションを行いました。特に、どちらかの方法論を排除することではなく、今後、双方を上手く活用していくため、言葉の意味についてしっかりと整理しておく必要があると感じ、今日の授業を行いました。参考にさせて頂いた、基本文献は平山満義編著『質的研究法による授業研究—教育学・教育工学・心理学からのアプローチ—』(北大路書房、1997年)に収録された「第2編 教育工学からみた質的授業研究 第1章 質的研究が教育工学においてめざすもの」です。今日の授業の中で、この文献のレビューを基に、デイスカッションが進められました。 次の4回目の授業は、『事例から学ぶ はじめての質的研究法』の「第一章 教育・学習研究における質的研究」を基に、レビューとデイスカッションが行われる予定です。 *ここからは、あくまで、授業内容に関する私(*和田学)が個人的に観察した内容となりますので、ご参考にしたい方のみどうぞ。  今日の授業のデイスカッションの結果の一つに、教育工学と異なり、質的研究は、様々な視点から考察する「羅生門的アプローチ」の性格を持っているのではないか、という意見に辿り着きました。教育工学と質的研究を比較するうえで、理解いし易いものだったように思えます。羅生門とは、芥川龍之介の小説ですが、一つの事件を様々な人の視点から語る内容のものです。研究分野においても、トライアンギュレーション(*トライアングル→三つの視点からの観測→多視点から研究対象を観察すること)という言葉がありますが、羅生門的アプローチも、多視点から一つの事象を観察するという意味合いがあるようです。従来の教育工学が、一視点から観察したアプローチであったものと比べ、質的研究は、様々な観測点から観察したものである、という位置付けです。  質的研究の特性を他の研究方法と比較して語られる際、量的/質的、実証的/脱実証的、その物自体/文脈的、研究者の主観/客観などがよくでてきたように思えますが、単一視点/多視点の違い、という対比はあまり見かけなかったように思えます。(文責・和田学)